人生を輝かせるものって?
きょうはエイプリル・フール。欧米のメディアでは必ず、エイプリル・フールにちなんだニュース記事を出します。
私がジュネーブにいた頃、『スイスロマンド放送のFMクラシック専門チャンネルが、スポーツ専門チャンネルに変わる!』という記事が、スイス・フランス語圏の新聞に載ったことがあります。なかなか現実的というか…とほほな気分でした。
「日本ではそういうエスプリは通用しないのかな?」と思っていたところ、なんと東京新聞は10年以上も前からエイプリル・フールであるという断り書きを付けた上で、ずっとエイプリル・フールの記事を掲載していたそうです。今年は産経新聞のコラムにも掲載されているとか…
日本も少しずつ変わってきたのでしょうか?

千葉市にて
先日、聖路加国際病院の理事長、名誉院長をされている日野原重明先生が講演にいらっしゃいました。先生は現在96歳、今も現役で日本のみならず世界中を飛び回っていらっしゃることはご存知のことと思います。
先生は聖路加国際病院の礼拝堂のみならず全館が非常時の救急救命に対応できる施設としました。それがあの忌まわしい地下鉄サリン事件のときに役立ったのは、記憶に新しいことです。
講演会には小さなコンサートがあり伺えなかったのですが、主催がオルガン喫茶コウヤマキ店主の幼稚園でしたので、先生の直筆サイン本をいただくという幸運に恵まれました。
それは、昨年12月に出版された『人生を輝かせる10のお話』というタイトルの本です。
日野原先生は音楽、美術、文学にも明るい方であることはよく知られていますが、『月刊美術』に連載されたエッセイをもとにしたこの本は、本格的な高齢化社会にアートがどれだけ人に生きる力を与えるかなど、10の分かりやすいお話にまとめられています。
巻頭の『人生を輝かせるためにアートを』という詩は、敗戦という負い目を背負いながら、工業とサイエンスと経済で必死に日本を立ち上がらせようと努力して生きてきた日本人に、「人生にいのちを注ぐものはアートだよ」とやさしく説いています。

今の日本人、日本社会を見ていると、かつて五木寛之氏が『デラシネ(根なし草)』ということばで表現したそのもののような気がします。芯が失われ(これは、終戦後アメリカによりなされたものだと超個人的にはそう思います)、まるで社会の表面をただように刹那を生きる人々。
本当に悲しいことだけれど、今の私の眼には日本人一般がこのように映ってしまいます。
ここには、自らの国が培ってきた伝統の音楽ではないものを求め外国で勉強した時、日本人のアイデンティティって何だろう?と考え、何の結論も得られなかった自分が反映しているのです。今やこんなことを考える人はいないのかもしれないけれど、コスモポリタンなんて言葉で片付けられない複雑な気持ちを抱いたことは確かです。
最近、偶然目にした獨協大学の木村佐千子準教授の古楽に関する論文に、音楽に感覚的な美しさや、快さばかりを求めるのではなくて、言語のように理解することも必要という一文を見つけました。
また日野原先生も、キリスト教から始まる西洋絵画を感覚的に素晴らしいと感じるだけでなく、『その作家をインスパイアさせたものは何か』を探ることで深く作品の核心にせまることができ、それが真に人生を豊かにすると、この本の中で述べていらっしゃいます。
音楽が、そういう風に人々の心に響いてくれるようなものであって欲しいなと切に願う今日この頃です。

追伸; モードスタジオQの山本ヒサヒロさんが、ANAの機内誌『翼の王国』3月号に登場しました。
また、2月に彼の開発したカット用具『レザルテ』がアメリカのTOOL OF THE YEAR に選ばれ、シカゴ、ロス、サンフランシスコ、そしてニューヨークと講習会に呼ばれて飛んで歩いています。レザルテは美容師が肝炎やエイズから身を守ることのできる優しいカット用具なのです。ガンバレ!!
香取智子 wrote|Date:08.04.01|
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